証券アナリストジャーナル10月号やすべえです。今月の証券アナリストジャーナルは「AIの金融応用 – 実践編」という特集です。気になったことや、書き留めておきたいことを徒然なるままに書いていきます。2017年8月号でAIの金融応用 – 基礎編が発刊されており、「機械学習」や、「AIの歴史と現在」などがまとめられていました。リンクはこちらです。(http://asfin.jp/analysts_journal_201708/

 

まず、「AIと資産運用」と題した座談会での議論から始まります。大学の先生でいらっしゃる酒井浩之氏、日本マイクロソフトの田丸健三郎氏、三井住友アセットマネジメントのベネット・ジェイスン氏という三者三様のキャリアを持つ方が出席者となっており、司会の方のファシリテーション能力が問われそうですが(笑)、8月号でも論文を寄稿されていた光定洋介氏が司会をされています。

大学教授の酒井氏は「学習データ作成の困難さ」といったテクニカルな問題から「学術界と実務界の繋がりの必要性」といった中長期的な課題まで幅広い知見で議論されています。また、酒井氏の研究室のホームページに決算短信から業績要因の情報を抽出するシステムが公開されていることが紹介されています。私は初めて知ったのですが、かなり凄い使えるシステムです。ジャーナルに載ったことで証券アナリストのからのアクセスが増えていそうです。(笑)リンクはこちらです。(http://www.ci.seikei.ac.jp/sakai/

テクノロジーサイドの田丸氏は「今回のAIブームと過去のAIブームの違い」をリソースの規模の違いであり、比較的少額の資本でコンピューティングする環境ができてきたことを挙げています。その他にもテクノロジーの進歩についてのしっかりとしたご意見が随所に出てきます。また、日米欧の比較で、日本のAI分野での人材育成がかなり遅れを取っていると警鐘を鳴らしています。

運用サイドの参加者であるベネット・ジェイスン氏は「AIを使えば何でも出来るわけでは無い」と釘を刺します。AIに明るくない人からすると、AIはドラえもんのポケットのようなものと勘違いしがちですしね。まずもって、「どのようにリターンを上げるか」という議論ありきで、「AIによる解決を求める」べきだと主張します。また、運用サイドとして外す事が出来ない「説明責任」についても言及があります。人間の理解を超えているアルゴリズムをどう説明するのかという問題です。

このAIの流れに乗るしかない!などと言うことは簡単ですが、大事なのはどういった技術がどのように実戦で使えるかを1つずつ考えていくことではないでしょうか。当たり前のことかもしれませんが。。。

 

さて、今月号のAI関連の論文は2本載っています。1本目の論文(金融テキストマイニングの最新技術動向ー和泉潔氏、坂地泰紀氏、伊藤友貴氏、伊藤諒氏)から見ていきます。表題通り、最新の技術動向が載っています。

私など一般の人が考えつくテキストマイニングと言えば、短時間で株価が大きく動いた事象に対して、どのようなワードが影響したかを探ったり、くらいでしょうか。ここでは、3つほど新技術が紹介されています。

まず、「極性辞書」の構築というのが出てきます。「上がる」、「下がる」とか、「強い」、「弱い」といったポジティブなワードとネガティブなワードを仕分けして辞書にするというものです。これを与えられた文章群から単語の繋がりを見極める技術で自動的に作っていったり、ニューラルネットワークという技術でポジションなワードとネガティブなワードの辞書を広げていくのだそうです。また、膨大な文章群から「Aという理由でBという事象が起こった」というAとBの関係性を抽出していくという技術が紹介されています。例えば、Aが大口取引先の減産、Bが部品を納入している企業が赤字に、といったものです。こういったことを機械がひたすら学習していくという話です。

 

2本目の論文(ハーディングの「相」解析と底検知ー羽室行信氏、岡田克彦氏)に進みます。表題で出てくる「ハーディング」とは「非合理的な群衆行動」という意味です。著者のお二方は、Magne -Max Capital Management に所属していらっしゃる大学の先生で、研究をベースとした実践的な論文になっています。

AIでの分析では、文章よりも画像のほうが分析能力が進んでいる印象があります。文章は因果関係を把握したり、二重否定を認識したり、克服すべき課題が多岐に渡っている一方で、画像認識は色が行列で並んでいてその関係性を如何に見つけていくかという事に集約されていると思います。(あくまで私の考えで、そんなに単純でないです)

この論文では、過去の値動きを画像化して、マーケットがハーディングで売られ過ぎになっている状態を見つけてしまおうというものです。売られ過ぎを見つけたいので下がる局面での株の相関係数を計算して、下落局面で類似性を探すという手法です。実に凄いです!

実運用に用いるためには、さらなる改良が必要とのことですが、読んでいて、予測の精度を上げていけるイメージが湧いてきますので、実践で役立つ日も近いのではないかと思います。僕が論文の作者だったら、売られ過ぎを買うのが上手いウォーレンバフェット氏に話をしてアドバイスを頂きたいところです。企業の本源的価値とかを絡ませることが出来たら、ボトムピッキングの世界標準になりそうな気もしました。

 

他にも、AI特集以外のところで、株主優待に関する論文(株主優待が株価にもたらす独自効果ー野瀬義明氏、宮川壽夫氏、伊藤彰敏氏)が出ていました。株主優待の廃止と増配を同時に発表した企業のリターンがどうなるのかという話です。株主優待は、配当というお金のやりとりと違って、お中元・お歳暮感がありますよね。つまり、株主優待でも配当でも金銭的にイコールならば一緒でしょ?という考えが成り立たないのですよね。不思議で面白いものです。