証券アナリストジャーナル12月号やすべえです。今月の証券アナリストジャーナルはズバリ、「金融リテラシー」特集です。今年は人工知能(AI)の特集など、興味深いテーマが多かったジャーナルですが、私のテーマである「金融リテラシー」が12月号で特集されました。気になったことや、書き留めておきたいことを徒然なるままに書いていきます。

 

1本目の論文(学校における金融経済教育の現状と課題ー家森信義氏)です。まずは現状把握ということで、金融広報中央委員会が行った「金融リテラシー調査」の結果をまとめています。若年層の金融リテラシーが他の年齢層と比べて低く、海外の先進国と比べても日本の金融リテラシーは低いという話です。

そこで、学校において金融経済教育をやっていきましょうという提言に繋がっていきます。しかし、残念な話とも言えますが、学校における金融経済教育は徐々に取り組まれるようになっているものの、授業時間の不足や、教える内容や考え方が他教科と違っているなど、教える側も課題を抱えている状況で、つまり十分ではない現状があります。(そんなことから、私も微力ながら金融教育を初めていくわけです。。。

私はこの問題、「授業時間を増やせ!」だけでは不十分と思います。今のカリキュラムでは、様々な教科で「1つの章の一部分」を寄せ集めたような形になっていて、これでは学習効果はあがらないのではと思います。金融リテラシーは集中してやれば一気に身につくものでもありますので、各学年の特別授業として数時間だけ、特定の事項のみに焦点を当ててやる方が良いはずです。今後実践する機会を見つけていきたいと思っています。

本論文の結びとしては、専門家の連携への期待をしていきましょうとなっています。確かに専門家の力は大事ですが、金融教育の大きな流れとして、「そもそもお金って、どういうもので、どう働いてくれるのか」を知った上で、「全体として教えるべきこと(経済の基本的な仕組みとか、生活設計と家計管理とか、クレジットとローンとか)」をやって、「個人個人で違ってくる問題に落とし込む」みたいな道筋をつけてあげるべきなのでは?と考えているのですが、どうなのでしょう?日々考えていきたいと思います。

 

2本目の論文(金融リテラシーに関する主要国との現状比較ー栗原久氏)は、OECD(経済協力開発機構)が金融リテラシーに関してどういった取り組みを行なっているかを教えてくれます。私は知っていましたが、日本の政府の金融教育へのコミットメントは他の先進国と比べてまだまだ道半ばという現実が紹介されます。

PISA金融リテラシー調査というものがあります。学力の国際比較ができるもので、日本は同機関の数学的リテラシー調査とか、読解力調査とかは参加していているのですが、金融リテラシー調査に関しては参加できていないんです。日本では前出の金融広報中央委員会が行った「金融リテラシー調査」において、国際比較出来る問題を数問やっていますが、正答率は芳しくなく、「日本の金融知識はOECD調査に参加した31国地域の中で24位の水準」という評価がされています。

この資本主義の世界では、実物経済だけでなくマネー経済が幅を利かせています。実物経済でもアメリカに押されている状況で、金融リテラシーが低いということで、マネー経済で劣後してしまってはいけません!

 

3本目の論文(日本人金融リテラシーはなぜ低いのか?ー山口勝業氏)は、日本における金融リテラシー分析の中でコンセンサスと言われているような事項を再度検討し、冷静に今後の金融リテラシー向上のためのポイントを指摘します。

まずもって興味深いのが、「金融リテラシーが低いから『貯蓄から投資へ』が進捗しない」のか「『貯蓄から投資へ』が進捗していない(投資経験が無い)から金融リテラシーが低い」のかという、「ニワトリが先か、タマゴが先か?」という問題提起を行うところです。

「投資経験が無い人が金融リテラシーが低い」というのは、「自動車の運転の経験が無い人が安全運転の知識をあまり持っていない」ことに例えられる、置き換えられるのではないか?という話に説得力があります。つまり、「自動車の運転の経験をどんな形でも積めば、安全運転の知識が手に入る」、置き換えれば、「投資の経験をどんな形でも積めば、金融リテラシーを手に入れることができる」のではないか?と考えるのです。

終盤には「効果的な金融教育の場は学校か家庭か?」という問題提起が出てきます。正にこの問題は私が思い悩んでいたことなのですが、金融広報中央委員会の調査では、学校に比べて家庭で金融教育を受けたと答えた人の方が金融リテラシー水準が高いというものです。学校という場での金融リテラシー向上も課題でしょうが、現状は家庭など学校外での金融リテラシー向上が有力という結論です。

最後に「社会人向け資産形成リテラシー向上のための提言」がなされています。コンセンサスを疑い、前向きな提言を行う意欲的で盛りだくさんの内容の論文で非常にためになりました。

 

4本目の論文(行動ファイナンスと金融リテラシーー大庭昭彦氏)は、現在盛んに研究が進む行動ファイナンスの考え方が金融リテラシー向上に有効に活用できることを教えてくれます。読み進めると、金融リテラシーだけでなく、行動ファイナンスで言われる非合理的な人間の行動パターンの認識も大事であると感じさせられます。

「金融リテラシー」で大事なことは、数少ない単純な常識であると出てきます。金利の意味を問う問題、インフレの意味を問う問題、分散投資の意味を問う問題の3問であります。私がセミナーなどでお話するときに使っている資料では7問(も?)やっていますが、大庭さんの議論を読み進めてみると、7問を考えるよりも3問を深く考えた方が良い気もしてきました。今後の資料のブラッシュアップの参考になります!

次に、金融リテラシーの大切さが「金融リテラシーが低いほど、長期的にお金を貯められない。金融リテラシーは退職時点の資産額の差の3分の1を説明する。」という事実により言及されます。肌感覚でも感じていますが、こういった事実を知ることによって、気づきになります。

「行動ファイナンス」は最近、リチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受けたこともあり、書店にも平積みされる本が増えてきていて、読んでいる人が増えてきていますが、本論文で紙幅の都合で短いもののわかりやすく明快に説明なさっています。大庭さんは、「新しい投資アドバイス手法と行動ファイナンス」という論文も書かれています。

トレーダーの仕事は数理的な計算力とともに、判断力が重要になります。判断力を磨く手段として行動ファイナンスを知っておくことは重要でしたので、基本的なことは理解していました。「利食いを早くしてしまい、損切りを出来ずに塩漬けにしてしまう」などが代表例かと思いますが、「買い持ち(ロングポジション)している時は、もし売り持ち(ショートポジション)していたらどう行動するかを考える」といった処方箋を自分で開発して実践していましたが、今や研究がすごく進んでいます。

後半には、実際に投資する際におけるヒントも散りばめられています。「ゴールベースの投資手法」と言うのですが、リスクの取り方を資金の用途別に考える方法です。要はゴールがある方が貯めやすいということです。例えば僕は大学生の時、バイクに乗りたくて計画的にお金を稼いだ時期がありましたが、その時はよくお金が貯まりました。一方、特に目的も決めずにバイトをして得たお金は何故か何処かで使ってしまっていました。また、「安全に対する誤解」という議論もあり、興味深く読み進めることが出来ました。

 

今月の論文は、金融リテラシーの特集でついつい熱い想いを書き綴り、長文乱文になり失礼しました。しかし、今月の論文群のように、金融リテラシーの重要性、金融リテラシー向上のために行動すべしというムーブメントは確実に高まっています!日本の金融リテラシーが世界一になるように日々努力していきたいと思います。