証券アナリストジャーナル1月号やすべえです。今月の証券アナリストジャーナルはETFの特集です。気になったことや、書き留めておきたいことを徒然なるままに書いていきます。

 

まず、1本目の論文(日本のETF市場の特徴ー原田喜美枝氏)で日本のETFマーケットの現状をおさらいしてくれています。東京証券取引所の「ETF/ETN Annual Report(http://www.jpx.co.jp/news/1080/20160328-01.html)」がオリジナルの資料なのですが、本当によくまとまっています。ちなみに、この資料は毎年3月末あたりに出ています。ありがたいことです。

連動対象のカテゴリー別の統計では、日本株指数の過半は信託銀行が持っていることがわかります。日本銀行が買い入れたものを間接的に保有しているものが入っていることが要因です。一方、REIT指数の過半は都銀・地銀等が持っており外国株指数の過半は個人・その他が持っているということで、指数ごとにホルダーが違うというのが興味深いところです。

一日売買代金ランキングでは、日経レバETF(1570)の売買代金が突出して多いことがわかります。ついで日経ダブルインバース(1357)と、値動きの大きなETFがワンツーとなっています。これらのETFは長期保有で持ち続けると宜しくない場合があるので、短期売買で売買代金が膨れているという解釈です。レバレッジETFの長期保有については、今度改めて書いてみます。

 

次の論文(ETFの活用事例についてー藤村真紀子氏、中岡寛晶氏)では、グローバルの債券ETFが拡大しているというネタがあります。2012年末には3000億ドル超だったのが、2016年6月のグローバル債券ETFの残高は6000億ドルを超えているそうです。低金利で債券もアクティブ運用からパッシブ運用に移行していている中で債券ETFが使われているということです。

売買代金も増えているようで、ハイイールド社債ETFの取引量が現物のハイイールド債券の取引量の10パーセント以上になっているとあり、驚きました。ETFのトランザクションコスト(取引コスト)は安いのでしょうかね?

他にもスマートベータETFについても、アクティブ運用からのリターンはたいして大きくないという議論をしながら、スマートベータが「一般的に広く知られたリターンの源泉」を求めて、「客観的なルール」で「透明性」を持って、「大きなキャパシティー」で運用できることを主張しています。

 

3本目の論文(日本銀行のETF買入の現状と課題ー今井幸英氏)では、昨今少し話題になっているETFを通じた日本銀行の推定保有比率について分析しています。個人的には大量のインデックス投資で個別銘柄に歪みが生じるならば、それはそのインデックスの選定基準やルールが良くないのであり、そのインデックスを使用しないという選択肢を考えれば良いのではないかと思います。ちなみに、香港のハンセン指数は1銘柄あたりのウェイトの上限を15パーセントにする改革をしたり、最近はその上限を10パーセントにさらに引き下げるなど、インデックス側も改革しています。

最後に日本銀行のETF買い付けの効果について述べていますが、ETFを通して株式のリスクプレミアム縮小という目的に対して、有効な効果を上げていないと思われると言っています。相場に絶対はないですし、こういった効果の判定は難しいものです。

 

ETFは革新的な素晴らしいプロダクトです。マーケットでの売買の新しい健全な選択肢として確立されたと思いますし、特に、現物を拠出しているレバレッジのないETFは、実需でありますから健全です。手数料の安いインデックス投信が流行っていますが、もっと、ETFにも目を向けていきましょう!

 

 

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