やすべえです。今月の証券アナリストジャーナルの特集は「LIBOR廃止とその課題」です。
株式トレーダーを20年やっていた私にとって、「LIBOR」は、かなりアウェイ感のある特集タイトルです。「LIBORはLondon Interbank Offered Rate、だよね・・・自信ないけど・・・。」くらいの知識で、「LIBORスキャンダルだっけ?Rateを操作してたんだよね・・・。」と問題があったのは知っていましたが、「え?LIBOR、廃止されるの?」と債券村の方ならば100%知っていることさえ知らず・・・。
加えて、論文ってオンゴーイングな(現在進行形的な)トピックってあまり扱わない気がしませんか?「LIBOR」問題なんて、超オンゴーイングなトピックなわけです。やすべえ、咀嚼できるのか・・・。
実際、4本の論文を読んでみましたが、なかなか理解できませんでした!理解のために、付箋紙にデータや事実を書いて、整理していくようなプロセスを行って、ようやく理解できてきた感じです。
ということで、今回は、ちゃんと読めているのか、いつにもまして自信がありません!
読んだ論文はこちら!
①「望ましい金利指標とは?」(齊藤誠氏)
②「LIBOR廃止後の金利デリバティブと金利環境」(田中隆司氏、室町幸雄氏)
③「リスク・フリー・レートへの移行に係るリスク管理上の幾つかの課題」(安達哲也氏)
④「金利指標改革の進捗と残された課題」(磯部昌吾氏)
の4本となります。
今回は、論文ごとに紹介する形式ではなく、話の流れの中で「この論文にこうこう書いていました」という形で入れていきたいと思います。
LIBORって何ですか?
先ほど書きましたが、「London Interbank Offered Rate」の略で、日本語で言うと、「ロンドン銀行間取引金利」となります。
色々な通貨(ドル、ポンド、ユーロ、スイスフラン、円など)の色々な期間(1M、3M 、6Mなどがよく使われます)での銀行間での貸出金利を、有力な金融機関(20行くらい?)が集計機関に報告し、集計機関が公表するというものです。
公表されたLIBORは様々な用途に使用されていて、例えば変動利付債ですと、「3M LIBOR+1%」というように金利が決められて、3か月ごとに3M LIBORに1%足した金利で支払が行われるという仕組みになります。
つまるところ、LIBORは「市場金利」として使われていたということになります。
LIBORスキャンダル!
①の論文で「スパイダー・ネットワーク」という本の内容が紹介されているのですが、2012年に、元東京駐在の外資系投資銀行トレーダーであるトム・ヘイズが逮捕されたというお話になります。
LIBORの上昇や下落にベットしていたトレーダーなどが、行内のLIBORの報告者や、取引の仲介業者(IDB、Inter-dealer Broker、と言ったりします)を上手く使い、LIBORの数値を不正に操作していました。その結果、彼らは不正な利益を手に入れ、報酬を手にしていました。日本では2006年7月に政策金利が0.25%に引き上げられてから、操作のし甲斐が出来たのでしょうか、儲かるようになったとあります。
この「LIBORの不正操作」はかなり前から行われていたようです。そして、LIBORの数値を決める仕組みに対しては、ずっと問題視されていたようです。考えてみれば、データや事実に基づく必要のない言った数字で決まってしまうわけですから、不正をしようと思えば出来てしまいます。問題視されて当然でしょう。そして、懸念通りに事件が発生したということになります。
LIBORからRFR(Risk Free Rate)へ
ほぼすべての論文で紹介されていますが、前段のスキャンダルを受けて、LIBORの公表が2021年末で停止される可能性が高まっています。そうなると、LIBORを使った金融商品や契約が大変な影響を受けてしまうわけで、これをどうにかしなければいけないと各国で対策が講じられつつあります。
LIBORとは違うRFR(Risk Free Rate)に移行するというのが本筋で、米ドルは「SOFR(Secured Overnight Financing Rate)」を使おうとか、イギリスポンドは「SONIA(Sterling Overnight Index Average)」を使おうとか、考えられているのですが、この移行がまた難しいのです。
というのも、こういった移行は、経済的に完全に損得の出ない移行になり得ない、つまり、どちらかが有利、どちらかが不利になってしまうからです。
②の論文では、価値の評価について数学的に考えています。
③の論文では、「LIBOR=翌日物RFR+term premium+bank term credit risk+term liquidity risk+term risk premium」として、第1項にベースとなる金利があって、第2項に期間による補正、第3項から信用リスクの補正、流動性リスクの補正、リスクプレミアムと分解して、考えてみることが紹介されています。この式では、第3項からは金融機関のリスク関連の部署などがずっと考えてきたところだと思うので、移行に損得はあれど、考えやすいところかなと思いました。
④の論文では、米国の動きを中心にまとめてあります。米国は取引量が多く、市場の厚みがあるということもあり、前々段の「SOFR」以外にも「Ameribor」や「ドルICE銀行イールド指数」といったものが用いられている、といったことが紹介されています。
米国以外では、イギリスポンドの「SONIA」はある程度普及が進んでいるですとか、ユーロはEURIBORが存続するといったことも紹介されていました。日本はどうなっているのでしょう?
最後に
今回は、本当に「読んだだけ」という感じで、私が証券業界に20年トレーダーをやっていたがゆえのインサイトが無い感じになってしまいました!
とはいえ、私としては、今回の4本の論文を読んで、LIBORについて、LIBORスキャンダルについて、LIBOR移行後の世界について、かなり理解が進みました。
こんな回もあって良いですかね!?何はともあれですが、最後までお読みくださいまして、ありがとうございました!
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