金融ジェロントロジーこの記事のタイトルは本のタイトルと同じですが、この『金融ジェロントロジー 「健康寿命」と「資産寿命」をいかに伸ばすか』を読んだ感想と思ったことを書き記しておきたいと思います。

 

「ジェロントロジー」とは、「老年学」や、「高齢社会総合研究」などと訳されるもので、医学、教育学、経済学、工学、社会学、法学など様々な分野がまたがっているような学問です。本著は、その「ジェロントロジー」を金融研究と組み合わせた「金融ジェロントロジー」について、さまざまな分野のプロフェッショナルの方が、それぞれの分野の観点から執筆しています。

章の題名は、順に、「ヘルスケアとウェルスケアの時代」、「超長寿社会における社会経済システムの構想」、「認知機能の低下した高齢者の意思決定」、「社会システムの変革で人口減少時代に挑む」、「高齢社会を支えるテクノロジーはどうあるべきか」、「高齢社会の働き方と健康」、「高齢者の認知機能の低下と法的問題」、「高齢者の資産管理のあり方を考える」、「グローバル化の中での日本の高齢化問題」となっています。

この章の題名群を見ておわかりになりますでしょうか、この本は「金融ジェロントロジー」を幅広い視点で知ることが出来ます。人口分布の予測からの今後の社会福祉の見通しといったファクト、高齢者の意思決定に関する評価のアイディア、社会システムの変革のためのICTの効果的な利用、健康寿命を延ばすキーとなるテクノロジーや高齢者就労環境の構築、ジェロントロジーに携わるならば必ず知っておきたい成年後見人制度などの法的事項、高齢者の資産管理の方向性などなど、本当に膨大なエリアをたった200ページほどに凝縮して書いてあり、我々読者は学ぶことが出来ます。

凄い本です。

 

私において、「ジェロントロジー」は、興味のある分野でしたが、この本との出会いも最近まで無かったので、資産運用の観点から考える程度でした。

そして、私の「ジェロントロジー」に関連する「資産運用」分野の分析は、国の財政の資料を調査する中で、社会保障費が増大しているという事実を知ることから、はじまりました。ここ数十年の間で、「老後ステージ」が変化していることは誰もが肌感覚で感じるところだと思いますが、ファクトを探していくと、「核家族化が進んでいる」、「長寿化が進んでいる」、「公的年金の給付率の低下が進んでいる」、「確定給付年金が無くなってきている・減ってきている」という主要な4つのファクトがありました。

その私の分析は、そういった4つのファクトを踏まえて、どういった資産運用を考えていけばよいのかという方向に進むのですが、「ジェロントロジー」的に考えれば、当然ながら、資産運用だけでなく、おそらく造語になってしまいますが、「健康運用」、世の中がどうあるべきかという「社会デザイン」など、様々な方向で議論され、実践されていくのでしょう。

そして、議論や実践の収束地が、日本の近い未来になるわけですが、識者の方々にはさらに議論を深めて頂きたいですし、実践には様々なハードルがあるでしょうが、方向性を決めて法制度や資本のサポートをしっかりとして頂きたいものです。また、私たちも問題意識を持って、見識を備えていきましょう!この未来が素晴らしいものであるように、願ってやみません。
ちなみに、上記の4つのファクトの話などは、私が寄稿しておりますコラムサイトに詳しく書いていますので、よろしければお読みいただければと思います。
年金「一部」自己責任時代の乗り切り方 その1 – 「老後ステージ」の変化

 

良い本に出合うと、嬉しいものです。この本を紹介していただいた友に感謝します。