2000万円報告書連載3回目となりました!

今回取り上げる「収入・支出の状況」から、いわゆる「炎上」の元ネタ的データ・事実が出てきます。

また、ぜひとも理解しておきたい年金の話も出てきます。

落ち着いて、一つずつ読み進めていていきましょう!

 

 

<1章「現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)」(2)収入・支出の状況 ア、平均的収入・支出>

 

1項目として、「平均的収入・支出」のデータが出てきます。いくつかあります。

 

最初に、「賃金が長く伸び悩んできた」として、総務省「全国消費実態調査」の世帯主の年齢階級別収入の推移が示されます。

これを見ますと、バブルの頃まで右肩上がりで、その後はその反動で下がって、ここ5年は横ばいというように見えます。ここまでのデータではまだリアリティが見えてきません。

 

 

次に、「公的年金の水準については、中長期的に実質的な低下が見込まれている」として、厚生労働省提示資料が出てきます。(23ページ)

これは重要なデータ・事実です。「所得代替率」という言葉が出てきます。「所得代替率」は、現役時代の手取りの収入の平均額と比較して、どのくらいの割合になるかを示すものですが、その所得代替率が、現在年金をもらっている人で70%近くあるものが、今40歳の人などにおいては、50%程度になりますよという話です。

平均余命が上昇する中で、給付を少しずつ減らしていかないと年金財政がキープできないということで、「マクロ経済スライド」というものが、2004年に導入されまして、そのスライドのルール(給付水準を下げていくルール)の下に、50%程度まで所得代替率が減っていきます

いずれ所得代替率は50%まで減っていくという仕組みです。この仕組みをよく考えてみると、早く所得代替率を減らしていけばいくほど、これから貰う人の年金財政にプラスの影響があるという、若者に有利になる(すでに年金を受給している人には不利になる)ものであることが分かります。

 

(参考ウェブサイト『マクロ経済スライドってなに?』『所得代替率の見通し~実際、「どのくらい」受け取れるのか』

 

 

「年金って、これから減るんでしょ?」ですとか、「年金って、ちょっとしか貰えなくなるんでしょ?」ですとか、「年金って貰えなくなるんでしょ?」ですとか、そういった不安をお持ちの方はとても多いと思いますが、ここでの確からしい答えは「年金は給付水準が一定程度(所得代替率で50%あたりまで)減る」というものになります。

「年金って貰えなくなるんでしょ?」に対する反論としては、将来のことなので、「そうです」、「いえ、違います」と軽はずみに断言はできませんが、私は楽観的で、これまで政府が打ってきた施策によって存続の可能性はかなり高まっていると思っています。

 

 

そして、「税・保険料の負担も年々増加しており」と続いていきます。内閣府 政府税制調査会資料のデータが示されます。

保険料の負担は、グラフを見れば一目瞭然ですが、社会保険料率が年々上がってきたことが分かります。

税の負担は、ここには詳しく書かれていないようですが、年金の給付において、平成16年度より前は、保険料と税金の割合が2:1でしたが、徐々に税金の比率を上げて、今では保険料と税金の割合は1:1になっていますので、税の負担は保険料との相対比較で増加しています。(こちらの厚生労働省の資料の97ページあたりに書かれています。)

 

 

ここまでをまとめると、急速な高齢化の進展によって、「年金は給付水準が一定程度(所得代替率で50%あたりまで)減る」「年金のための税・保険料の負担も年々増加している」ということになります。

 

 

 

話は変わりまして、「支出」のデータ・事実に移ります。

まずは、先ほどの総務省「全国消費実態調査」の世帯主の年齢階級別消費支出の推移が示されます。「支出はほぼ収入と連動している」となります。これを見て、単純に思うのは、「稼いだら、消費してしまう」という人間の性なのですが、この後に、例の炎上の火種となった資料が出てきます。

「高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる」との文言です。厚生労働省提示資料が出てきます。(24ページ)

 

この5万円が独り歩きしていくことになるわけですが、私が世の中の炎上前、5月24日あたりに読んだ時には、「なるほど。今の高齢夫婦無職世帯だと、平均で持っている貯蓄を取り崩しているんだな」と平板な感想を抱いただけでした。なぜなら、私は年金だけで老後を暮らしていけるとは思ったことがありませんでしたし、政府もそんなことを言ったことがありませんでしたし、報告書にある図には、高齢夫婦無職世帯の平均純貯蓄額が2484万円と書いてあって(おそらく退職金だったりするのでしょう)、それを取り崩すようなイメージで図が書かれていたからです。

貯蓄額のことを考えずに、収支の数字だけを捉えれば、「高齢夫婦無職世帯では、毎月5万円ちょっと取り崩すから、取り崩す資金を作っておかなければならない」となります。個人的な考えとしては、「稼いだら、消費してしまう」「貯蓄があるから、消費してしまう」のが人間の性ですし、収入や貯蓄額といった「置かれた状況」に応じて収支のバランスは取らなければいけないものと思います。

後半の主張に繋がっていきますが、この将来の「置かれた状況」というのは、現役時代のお金のやりくりを上手に行うことや、資産運用を活用することによって、限界はあるかもしれませんが、プラスの影響を与える(状況を良くする)ことが出来ることなのだろうと思います。

報告書は、このことをメッセージとして伝えたかったのではないかと、私は思っています。

 

 

さておき、今回は「平均的収入・支出」についてグググっと見てまいりました。次回は、「収入・支出の状況」の残りの節の項目を、一つずつ理解していていきます。

第1回のページに目次的なものを作っております。