老後2000万円報告書「老後2000万円」の報告書に書かれていることを一つずつ理解するシリーズ、第2回です!

<1章「現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)」(1)人口動態等 を読み進める>

1章では、様々なデータ・事実が紹介されていきます。一つずつ理解していきましょう。今回は1節、「人口動態等」です。

 

まず、「長寿化」です。「1950年頃の平均寿命は約60歳であったが、現在は約81歳まで伸びている」ことが紹介されます。報告書のソースは、厚生労働省「第22回完全生命表」「平成29年簡易生命表」より作成されています。

そして、「現在60歳の人の約4分の1が95歳まで生きるという試算もあり」、と紹介されます。ソースは、国立社会保障・人口問題研究所「将来人口推計」(中位推計)より作成されています。

Q1. 長寿化が急速に進んでいるが、今後、年金制度は大丈夫なのか?
Q2. 人口構成はある程度予見できるものなので、政府も対策を打っているのではないか。よって、長寿化が急速に進んだからといって、年金制度がたちいかなくなるとは考えにくいのではないか?

私は長寿化と聞くと、年金制度のことをすぐに思い浮かべてしまいまして、上記のような問いを考えました。他にもたくさんの問いが生まれてくるのではないかと思います。

 

 

ここで、「健康寿命」という概念が紹介され、「この健康寿命は、男性で約72歳、女性で約75歳である」と紹介され、「平均寿命から考えると9~12年は、就労が困難など、日常生活に何らかの制限が加わる形で生活を送る可能性がある」との記述が出てきます。

 

 

ちなみに、介護については、「公益財団法人 生命保険文化センター」のホームページを見ておくことがよいかと思います。「介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?」といったページで、データ・事実を得ることが出来ます。

 

私も、過去の記事、『「高額介護サービス費制度」を知っていますか?2』において、こちらのデータ・事実を使っていて、私の場合は介護の年数を10年として計算しています。

「高額介護サービス費制度」を知っていますか?2

 

 

次は、「単身世帯等の増加」です。「65歳以上の者のいる世帯の世帯構造の推移」のグラフが示され、世代世帯の割合が急減し、単独世帯、夫婦二人世帯の割合が増えていることがわかります。ソースは、総務省「国民生活基礎調査」より作成されていると書いてありますが、こちらのリンクは厚生労働省ホームページから取得しています。

Q3. 核家族化によって、住居費が余計にかさむなどで、トータルの家計の費用が増えているのではないか?

Q4. 三世代世帯で暮らすことによって、トータルの家計の費用を減らすことが出来るのではないだろうか?

といった問いが浮かんできます。

 

 

また、「持ち家比率の低下」といったことも、総務省「住宅・土地統計調査」のデータより、示されています。

こちらは、家賃を支払っていくかどうかという支出の大きな項目に関わってくるものです。

 

 

本節では最後になりますが、次に紹介されていることは、「認知症の人の増加」についてです。

「近年、認知症の人の増加が顕著となっている。2012年の65歳以上の認知症の人は約462万人、65歳以上の約7人に1人とされ、(中略)いわゆる軽度認知症の人の数は約400万人と推計されている。これらを合わせると、65歳以上の4人に1人が、認知・判断能力に何らかの問題を有していることになる。」とあります。(下線は筆者が追加)

続いて、「80歳から84歳では認知症の有病率は、男性は約6人に1人、女性は約4人に1人、85歳~89歳ではこの割合は倍ほどに増加し、以降の年齢でも認知症の有病率が増加している。」と書かれています。

ソースは、『都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応:平成23年度総括・分担研究報告書 厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業(朝田隆ほか)』(PDFが3つに分かれており、Part1Part2Part3とありますが、Part3にあるp.119のグラフが使用されています。)より作成されています。

 

ここで、認知・判断能力の低下によって、資産管理が自由に行えないことが問題提起されています。成年後見制度などをどう管理していくかが重要な課題の一つと議論されています。

Q5. 認知・判断能力の低下で、資産管理が自由に行えないとなると、その資産は塩漬けになってしまうのだろうか?贈与などは出来るのだろうか?

Q6. 高齢者層は金融資産を多く持っているが、その高齢者層の資産が、認知・判断能力の低下で、資産管理が自由に行えず有効利用されないとなると国家として困るのだろうか?

といった問いが浮かんできます。

 

認知症患者の保有する金融資産額(推計と将来資産)については、第一生命経済研究所「認知症患者の金融資産200兆円の未来~2030年度には個人金融資産の1割に達すると試算~」のデータより、示されています。

 

 

<「データ・事実をしっかりと見る」ということ>

「データ・事実をしっかりと見ず」に、どこそこから叫ばれる行動のアイディアのようなものを見聞きしても、間違った解釈で、間違った行動をしてしまう可能性が増え、不安は増大してしまいます。

「データ・事実をしっかりと見る」ということは、とても大事であり、そのデータ・事実を分析して、確からしい答えを探していき、その答えから行動のアイディアを描いていくという一連の流れが漠然と思っている不安を解消することに役立ちます。

今回、「足りない!」、「足りないんです!」と半ばアジテーションのように何度も言われてしまうと、本来足りている人も不安になってしまいます。その不安を取り除くためには、やはり、「データ・事実をしっかりと見る」ということが大事になってきます。

 

今回の連載は7回になる予定です。次回は1章の2節、収入・支出の状況について一つずつ理解していきます。もう少しお付き合いいただけたらと思います。

第1回のページに目次的なものを作っております。