金融庁報告書前回から引き続きですが、「収入・支出の状況」について、一つずつ読み進めていきましょう!

 

<1章「現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)」(2)収入・支出の状況 イ、就労状況>

高齢化の進展で、就労状況はどう変化したかということを調査した結果が出てきます。

 

「2016年においては、65歳から69歳の男性の55%、女性の34%が働いており、これらの比率は世界でも格段に高い水準になっている」と、労働政策研究・研修機構の「データブック国際労働比較2018」によるグラフが提示されます。

元気で、働きたいと思っている高齢者が多いというデータが、文部科学省「体力・運動能力調査」だったり、内閣府「高齢者の日常生活に関する意識調査」などから分かります。

そして、「思考レベルも高い」ようで、「OECDの調査によれば、60歳から65歳の日本人の数的思考力や読解力のテストのスコアはOECD諸国の45歳から49歳の平均値と同じ水準になっている」とあります。ソースは、総務省「平成29年度通信利用動向調査報告書」や、OECD「Program for the International Assessment of Adult Competencies」厚生労働省提示資料(28ページ)となります。

 

こういった背景から、「高齢者の就労継続は今後も続くのではないかと考えられる」と結論付けています。

 

 

前回見て来ましたが、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円とありました。ここから考えると、働いている限りは、5万円の赤字分はカバーできる可能性が高く、収支はおそらく大丈夫だろうと考えます。

問題なのは、働けなくなってからの収支であり、その時のための費用は工面しておく必要がありそうです。介護に関しては今後状況が変わってくると思いますが、私のざっくりとした試算は、10年間分の介護費用として、500万円程度です。

下記にに高額介護サービス費制度についてまとめていますので、宜しかったらご覧ください!

「高額介護サービス費制度」を知っていますか?2

 

 

この節の最後には取ってつけたよう(?)に、若年層についての意見が書かれています。

「若年層を中心に働き方は多様化している。最近では、転職はもちろんのこと、副業という形態で、個人が複数の仕事を持つという形式は増えつつあるし、企業や組織に属さず働く、いわゆるフリーランスという働き方も増加している。」と記述し、ランサーズ株式会社の「フリーランス実態調査」のグラフが載っています。

文章としての言及はないものの、「年齢階級別 非正規雇用比率の推移」という総務省「労働力調査詳細集計」より作成したグラフが提示され、全般的に非正規雇用比率が上がっていること、特に55歳から64歳の比率が高いことが提示されます。

 

ここで、この報告書が暗に言いたかったことは、退職金をもらうというモデルが変化してきているので、「将来の置かれた状況」にマイナスの影響があるということであると思われ、それは次項において説明されていきます。

 

 

<1章「現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)」(2)収入・支出の状況 ウ、退職金給付の状況>

まずは、退職金給付の状況について、報告書から4つの文章を引用します。

「かつては退職金と年金給付の二つをベースにして老後生活を営むことが一般的であった」

「公的年金の水準が当面低下することが見込まれていることや退職金給付額の減少により、こうしたかつてのモデルは成り立たなくなってきている」

「退職金給付制度がある企業の全体の割合は徐々に低下をして枝折、2018年で約80%となっている。この割合は企業規模が小さくなるにつれて小さくなる」

「定年退職者の退職給付額を見ると、平均で1,700万円~2,000万円程度となっており、ピーク時から約3~4割程度減少している」

上記のように、これまでの経緯や事実が紹介されていきます。「ふむふむ」と読んでいけば良いですが、①昔は、「退職金+年金給付のセットで老後生活」でした②退職金をもらうモデルが変化してますので、今は、「退職金+年金給付のセットで老後生活」というのは変わってきていますね、ということが言いたいのでしょう。

 

そこで、以下の文章が続いていきます。これは、かなり重要なメッセージと思います。

「自身の退職金の見込みや動向については、早い段階からよく確認しておく必要がある」

 

確認して、退職金が無い人は、「退職金+年金給付のセットで老後生活」は出来ませんので、「退職金に相当するもの+年金給付のセットで老後生活」にする必要があるということです。

つまり、「退職金の相当するもの」を作っていかなければいけないのですが、そこで出てくるものが「資産運用」になってきます。

何?資産運用??いきなり「資産運用」なんてどうして出てくるのよ!という話になってくるわけですが、これは、昔は、「企業」が「資産運用」して「退職金」を作っていたので、「個人」が「資産運用」する必要性は乏しかったのですが、今は、「個人」が「資産運用」して「退職金に相当するもの」を作っていかなければいけないので、「個人が資産運用をやらないといけない」ということになってくるのです。

ここをちゃんと書いといてくれたら良いのですけどね。。。

 

この節の最後は、「退職金の金額の大きさを踏まえると資産運用に回す金額は多額であると言えることから、こうした投資を行う際には、運用方針や資産運用にあたって必要な金融に関する知識を、事前にある程度は身につけてから臨むことが望ましいと言える」と結んでいます。

 

「個人が資産運用をやらないといけない」として、「必要な金融に関する知識を、事前にある程度は身につけてから臨むことが望ましい」というのは、言うまでもないですし、今働いている、いわゆる現役世代は、資産運用を長期間行うことになります。計画的に、そしてアタック25の言葉を借りますと、大胆かつ冷静に行っていく必要がありますでしょう。

 

 

※一つ、この節における注意事項ですが、退職金については、働き方によってかなりばらつきがあり、平均値や中央値を見ることにあまり意味がないと私は思っています。ですので、本文には平均退職給付額の推移のグラフなどがいくつか出てきますが、ここでは割愛しました。グラフ等、原文を読みたい方は、こちらのリンク(令和元年5月22日バージョン)か、こちらのリンク(令和元年6月3日バージョン)をクリックしていただければと思います。

 

 

 

次回は、「収入・支出の状況」の残りの節の項目、「金融資産の保有状況」を、一つずつ理解していていきます。

第1回のページに目次的なものを作っております。