やすべえです。今月の証券アナリストジャーナルの特集は「株価指数」です。
座談会+論文2本という変則的な構成となっていました。何はともあれ、読み進めてまいります。

私は1999年から2017年まで日本株のトレーダーを主にやっていました。その間に「株価指数=インデックス」というものは、ものすごく成長していきました。
インデックス絡みのトレードのチャンスは本当にたくさんあって、まず思い出すのは2000年春の日経平均の大規模な入れ替えです。その年には、秋にも、興銀、富士、第一勧銀が合併してみずほFGになるというビッグイベントがあって、当時は若手でした私は、しっかりとトレード出来るように、やって良いこととやってはいけないことを明確化して、十分な準備をして臨んだことを思い出します。

トレーダーにとって、株価指数は知り尽くしていなければいけないものですので、今回のジャーナルを読んで新しい知識というのは殆どありませんでした。とは言うものの、読んでためになる論文でしたので、読んだ感想を書いていきたいと思います。

 

1本目の論文は「株価指数とそれを巡る諸問題(芹田敏夫氏、花枝英樹氏)」です。

本論文は「インデックスの基礎を知りたい人はダウンロードして読むべし!」と言えるような論文で、株価指数とは何ぞや?ということがまとまっています。

まず、株式指数の役割として、①市場全体の株価の動きを知らせる②運用パフォーマンス評価のためのベンチマーク③パッシブ運用のための対象指数④デリバティブの原資産、と挙げています。

これは、原則4つの役割があるというもので、SOX(フィラデルフィア半導体指数)のように、特定業種の株価の動きを知らせるものもありますし、大型株/中小型株指数、グロース/バリュー指数といった、市場のある部分の株価の動きを知らせるものもあります。

 

次に、株価指数の要件として、①代表性②リアルタイム性(速報性)③過去からの連続性(整合性)④透明性⑤投資可能性、と挙げています。

これは冒頭に書きました2000年春の日経平均の大規模な入れ替えでかなり議論されました。日本経済新聞社の指数担当の方に聞かないと真実は分からないかもしれませんが、おそらく「①代表性」の観点を鑑みて、オールドエコノミーの銘柄からニューエコノミーの銘柄への入れ替えを試みたのでしょう。そして、入れ替えのトレードが大きな株価インパクトを伴うものであったために「③過去からの連続性(整合性)」が失われてしまったということになります。アナウンスからトレードまでのタイミングが短かったことも影響していますし、客観的に銘柄が選ばれたかという「④透明性」も議論されたかと思います。

 

三番目には、株価指数の算出方法による分類があり、①算出方法による分類として、価格加重(NYダウや日経平均)、時価総額加重(昔のTOPIX)、浮動株調整後時価総額加重(今のTOPIX、SP500、MSCI)、ファンダメンタル加重(FTSE RAFI、売り上げや配当といった指標が使われるもの)があり、②投資対象による分類として、市場別、規模/スタイル別、業種別、テーマ別があるとしています。

それぞれの長所短所があります。価格加重は計算が簡単ですが、高株価の銘柄の影響が大きくなってしまう短所があります。時価総額加重は発行済み株式数のデータがあれば、価格加重と同じくらいの簡単な計算となりますが、浮動株の少ない銘柄は株価指数の売買においての品薄銘柄となり取引が難しくなる可能性があります。それを改善したものが浮動株調整後時価総額加重ですが、浮動株比率の算定プロセスの策定やその維持管理コストといった問題があります。

 

この他、株価指数の歴史として、1976年にインデックスファンドが誕生し、1982年に株価指数デリバティブが誕生し、1993年にETFが誕生した、といったイノベーションの歴史が紹介されています。

また、株価指数が及ぼす影響として、ここには書ききれませんが、様々な影響があることが言及されています。影響はありますが、株価指数が発展してきたことによる恩恵の方が大きいでしょうか。

 

ということで、株価指数を知りたいという方に非常に勉強になる論文でした!

 

 

2本目の論文は「巨大機関投資家と株価指数(徳島勝幸氏)」です。

この論文では、日本の巨大機関投資家がどのように株価指数での運用をしているかがまとめてあります。

まずは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)ですが、2019年度の業務報告書のデータとして、TOPIXに基づくものが22.4兆円、JPX日経400に基づくものが1.1兆円、ラッセル野村プライムに基づくものが1.4兆円、スマートベータに基づくもの(S&P GIVI、野村RAFI)が3.2兆円、ESGに基づくもの(MSCI日本株女性活躍指数など)が4.0兆円などがあります。

地方公務員共済組合連合会についてや、企業年金連合会についてや、国民年金基金連合会についてや、日本銀行についての情報も出ています。

 

本論文はインデックス運用について書かれていて、アクティブ運用についてはあまり言及されていませんが、『マーケットの局面が変化しても、常に超過収益を得られるアクティブ運用は存在しない』とかなり突っ込んだ意見が書かれています。

私は、マーケットの局面が変化しても常に超過収益を目指すものが真のアクティブ運用なのではないかと思います。

加えて言えば、テーマ型といった一局面にしか対応できない運用はもはやアクティブ運用ではないとも思っていて、
(このあたりは2020年8月号の動画で吠えていますw)

そういった運用はeMAXIS Neoといったようなテーマ型の指数で十分間に合うと考えています。

 

 

最後に

今回の証券アナリストジャーナルの編集スケジュールと(おそらくですが)前後した形で、「TOPIX(東証株価指数)等の見直しに関する指数コンサルテーションの開始について」というリリースがJPXよりありました。

サマリーはこちらにまとまっていますが、①2022年4月4日に東証第2部株価指数、JASDAQ INDEX、J-Stock Index、TOPIXコンポジットインデックスシリーズが廃止され、その1年後2023年4月3日で東証マザーズ指数、東証マザーズCore指数、JASDAQ-TOP20が廃止、そして②2022年4月4日より東証グロース250指数東証グロースCore指数東証スタンダードTOP20新市場別指数(プライム市場/スタンダード市場/グロース市場)東証プライムコンポジット指数旧東証市場第一部指数が算出開始となるとのことです。(一部の名称は仮称となっています)

新しく算出開始となる指数のサマリーはこちらです。

それぞれの指数が継続されるのか、終了するのか、新規に出来るのかといった表はこちらに出ています。

肝心のTOPIXの見直しですが、2022年10月末日~2025年1月末日まで四半期ごと10段階で行われる予定で、流通株式時価総額100億円未満の銘柄が原則として除外対象となるとのことです。

 

今月も、「証券アナリストジャーナルを読んで」を見て頂きまして、ありがとうございました!

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