やすべえです。証券アナリストジャーナル、今月の特集は、「サステナブル社会における資産運用業のあり方ー第12回SAAJ国際セミナーよりー 」です。

 

第12回SAAJ国際セミナー、コロナ禍ということで、変則的に開催!

去年に続いて、オンライン中心の開催となっています。

ラインナップは、第1部はインタビューとして、池田賢志氏(金融庁、チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー)が登壇。
インタビュアーはデバリエいづみ氏(BofA証券MD、主席エコノミスト)となっています。

第2部はビデオメッセージとして、サイラス・タラポレヴァラ氏(ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ社、CEO)
ゲアハルト・ヴィ―スホイ氏(B.メッツラー・ゼール・ゾーン、代表取締役)
ピーター・ハリソン氏(シュローダー、グループ・チーフ・エグゼクティブ)が登壇しています。

第3部は対談で、猿田隆氏(三井住友DSアセットマネジメント、代表取締役社長)
前原康宏氏(日本証券アナリスト協会専務理事、対談時)が登壇しています。

第4部はパネルディスカッションで、高村孝氏(ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、代表取締役社長)
西岡明彦氏(りそなアセットマネジメント、代表取締役社長)
萩野琢英氏(ピクテ投信投資顧問、代表取締役社長)
横手実氏(野村総合研究所、常務執行役員資産運用ソリューション事業本部長)
阪口和子氏(アライアンス・バーンスタイン、代表取締役社長)が登壇しています。

 

第1部:インタビュー 池田賢志氏(金融庁、チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー)

チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサーの方へのインタビューということで、まずは、「サステナブルファイナンスとは何ですか?」という質問がされます。

池田さんは3つの要素を提示されています。

①金融が持続的に経済社会システムに貢献していくこと
②経済社会システムそのものがサステナブルでなければいけないという観点
③経済社会システムを持続可能なものにしていくために、環境上の価値、社会上の価値を金融としてどのように生み出していくのか。リスク、リターン、インパクトにどう取り組んでいくべきなのかということ

③で提示された「リスク、リターン、インパクト」という3軸での考え方は興味深いものです。インパクトは企業が社会に与える影響のことで、プラスインパクト、マイナスインパクトといった感じで語られることが多いように思います。

良い気付きを得ることが出来ました!

 

第2部:ビデオメッセージ サイラス・タラポレヴァラ氏(ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ社、CEO)

いろいろと良いことが書いてあったのですが、私がフムフムと思ったのは、彼の考える「直面している新しいマクロ環境」というものでした。

・歴史的に高い政府債務の水準
・歴史的に低い金利
・地政学的な不確実性
・規制環境の変化
・気候変動リスク

このように5つ挙げていて、例えばESG投資についてだったらESGについてだけ考えてしまう傾向がありますが、資産運用って、総合的に色々考えなければいけないわけですよね。マクロ環境の総点検、大事だなと思いました。

 

第2部:ビデオメッセージ ピーター・ハリソン氏(シュローダー、グループ・チーフ・エグゼクティブ)

このビデオメッセージにもインパクト投資に関する言及があります。「これまでの資産運用では、リターンとリスクに着目してきた。しかし、今やリターンとリスクを考えるだけでは十分ではない。企業が社会に与えるインパクトも評価する必要がある。新たな第3軸であるインパクトは、資産運用業界のあり方を変えていくことになるだろう」と書いています。

これまでの資産運用の世界では、「ハイリスク、ハイリターン」とか「ローリスク、ローリターン」といったふうに2軸で考えていたでしょう。
しかし、これからの資産運用の世界では「ハイリスク、ハイリターン、マイナスインパクトだから投資対象外」とか、「ローリスク、ローリターン、プラスインパクトだから投資対象とする」といった考え方になってくるのだということです。

シュローダー社のインパクト投資に対するコミットメントは深く、2021年5月に【インパクト投資ガイドブック】というものをリリースしています。

この他、「impactIQ」というビジネスのライフサイクル全体をとらえ、企業が環境や社会に対して与えるインパクトを評価するツールについての紹介があったり、「SustainEx」という企業の外部性を財務的なコストとして計測できるツールの紹介があります。

インパクト投資のムーブメントがすぐそこまで来ていると感じさせられました。

 

最後に

二昔前でしょうか、一昔前かもしれませんが、かつての資産運用業は刈り取り型、焼き畑農業型と言われることもありました。

それなりの規模の資産を保有しているお客様をさがして、情報格差を利用して、ハイマージンの商品の売買など、割に合わない資産運用をさせて、顧客が大きな損をするなどして売買してくれなくなったら、次のそれなりの規模の資産を保有しているお客様をさがして・・・というものです。

今回のテーマは、「サステナブル社会における資産運用業のあり方」ですので、少しズレてしまっていますが、上記に書いたような「サステナブルじゃない資産運用業は無くなっていくだろうか?」、「サステナブルな資産運用業の完全系はどういうものなのだろうか?」などとしみじみと考えていました。日本の資本市場が健全に発展していくことを願ってやみません。

 

動画版では、インパクト投資に関するインデックス投資信託の普及がインパクト投資普及のために大事なのではないか?という話をしています。ぜひご覧いただけましたらと思います!