やすべえです。今月の証券アナリストジャーナルは『実験行動ファイナンス』という特集です。

いつもの論文4本という構成でなく、座談会+論文2本という構成です。読み応えがかなり減っていると感じました。
最近、2022年3月2022年4月など、この構成が増えています。紙でのジャーナル発行が終了したこともあり、
「手を抜いているんじゃないか?」と懸念しています。(冗談です)

私は論文の質について言及出来る身分ではありませんが、1本目の花木氏の論文は2021年に”Journal of Behavioral and Experimental Finance”で発表された内容が論文の半分程度を占めていたり、2本目の岩壷氏の論文は、2021年に英文で発表された論文の和文サマリーのようなものだったりします。
オリジナルの論文が載る頻度が減っていますでしょうか?
ジャーナルの地位低下が心配です!(冗談です)

 

 

1本目の論文は『実験ファイナンス研究の最前線(花木伸行氏)』です。

実験ファイナンスの2例が挙げられていて、「実験ファイナンスとは何か?」が分かる論文となっています。

第1例は、「仕組金融商品への投資実験」です。
仕組金融商品といった複雑な商品の理解力は、地頭の良さで乗り越えられないところがあり、投資家保護の観点で改善の余地があるのではないかと考えます。

第2例は「株価予想実験」です。
大学生とCMAを被験者として株価予想をするのですが、株価の上昇や下落の背景が不明なチャートを使って株価を予測すると有意な差が出ないが、日経平均のリアルなチャートを使って株価を予測するとCMAが優位になるという結果になります。

 

実験ファイナンスとは、上記のように仮説を立てて実験で実証していくような学問のようです。
実験のコストが大きくなりそうですが、得られる結果は紛れもない真実ということで、新たな発見を得るための一つの有力な方法であることが分かりました。

 

2本目の論文は『FX投資家の個人特性と投資パフォーマンス―アンケート調査と取引データによる分析―(岩壷健太郎氏)』です。

FX個人投資家の取引、認知能力、非認知能力などから、投資パフォーマンスがどうなるかを分析していくものです。

認知能力として、金融リテラシー、FX専門知識、認知反射能力が用いられています。投資パフォーマンスにポジティブであるものの、有意ではないという結果が出ています。
非認知能力として、ビッグファイブといわれる、外向性、協調性、誠実性、繊細性、開放性を用いていますが、こちらも有意ではないという結果が出ています。

有意なファクターとしては、「女性」、「無職・年金受給者」の投資パフォーマンスが良い結果で、「他人に対する自信過剰」が投資パフォーマンスに悪影響を与えるとなっています。
なるほどという感じですが、画期的な結果ではないかもしれません。

 

この研究を行うにあたり、FX個人投資家の取引に関するビッグデータを使っているようなので、Tensorflow(テンサーフロー)などを使って機械学習させてみたいです!
不定期にトレーディングする人で、どういった人が勝てるのかなど、興味があります。

 

座談会は『マーケットの予測精度を上げる―専門知識と認知能力、性格的特性の役割―(岩谷渉平氏/大庭昭彦氏/花木伸行氏/岡田克彦氏)』です。

論文の内容の紹介や内容についての議論が主だった内容になりますが、「Super Forecaster」について言及されています。

「Super Forecaster」は「超予測者」という意味になりますが、
2015年に出版された「Superforecasting: The Art and Science of Prediction」に書かれている内容になります。
2016年に邦訳が出ていて、2018年には文庫の形でも出版されています → https://amzn.to/3AnqZhf

著作で明らかになったことは、未来予測が出来る一握りのグループが存在するということです。
『具体的には2万人以上のボランティアに市場動向から政治情勢まで、さまざまな領域の未来予測をさせた結果、抜群の成績を誇る「超予測者」が約2%存在することが判明。』と書いてあります。(Amazonサイトより)

本の最後の方には「付録」として「超予測者を目指すための10の心得」が載っています。
本を読んでいただいたほうが良いですが、まとめていらっしゃる方のサイトを一つご紹介します。

骨太な書評を読みたい方はコチラのリンクがおススメです!

 

最後に

今月も、最後までお読みくださいまして、ありがとうございました!

紙媒体での読み物の質の平均と、電子媒体での読み物の質の平均を比べてみると、紙媒体のほうが高いと言えるでしょう。
証券アナリストジャーナルは電子媒体で発行することによりコスト減を狙ったのでしょうが、紙媒体で発行しないことによる質の低下のイメージが出てきている気がしてなりません。

そんな事を言っているうちに「Nature」「Science」が紙媒体をやめてしまうかもしれないし、電子媒体化のメリット・デメリットはすぐに分かるものでは無いでしょう。

いろいろ言ってしまいましたが、毎月、知的好奇心を刺激してくれる証券アナリストジャーナルに感謝しています。
今後も高いレベルで知的好奇心を刺激していただけたら嬉しいと純粋に思っている次第です。