72の法則「この報告書は5分で読める」なんていう話もありましたが、やすべえのサイトではゆったり読み進めていまして、はや6回目になってしまいました。

今回も、少しゆったりと読み進めていきます。

 

<2章「基本的な視点及び考え方」を読み進める>

本章では、1章での現状認識を踏まえ、「高齢社会における金融サービスに関して、個々人及び金融サービス提供者の双方が共に認識することが望ましい事項が導き出されるのではないかと考えられる。」と書かれ、実際に「双方が共に認識することが望ましい事項」が4点、述べられていきます。

(1)   長寿化に伴い、資産寿命を伸ばすことが必要

(2)   ライフスタイル等の多様化により個々人のニーズは様々

(3)   公的年金の受給に加えた生活水準を上げるための行動

(4)   認知・判断能力の低下はだれにでも起こりうる

この(1)において大事なのは、「生涯にわたる計画的な長期の資産形成・管理の重要性を認識することが重要である」という一文で、平均としての「5万円」とか「2,000万円」という数字ではなく、個々人で具体的な数字を考えておきたいところです。

プロセスとしては、①「国民年金・厚生年金」で生涯貰える金額をチェック②確定給付型の私的年金で一定期間貰える金額をチェック③確定給付型でない私的年金で取り崩せる金額をチェック、という3段階のプロセスとなりますが、外部サイトですが、私が少し前に(結構張りきって!)書きました記事をご参照いただけたらと思います。

 

 

(2)においては、「今後は自らがどのようなライフプランを想定するのか、個々人は自分自身の状況を「見える化」した上で対応を考えていく必要があるといえる」という箇所が大事で、対応としては(1)と重複しますが、計画的な長期の資産形成・管理について、個々人で具体的な数字に落とし込むということになるでしょう。

 

 

(3)は、(1)や(2)と連動します。知りたくないような苦しい事実ですが、知っておかなければいけないこととして、「公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していくことを踏まえて、年金制度の持続可能性を担保するためにマクロ経済スライドによる給付水準の調整が進められることとなっている」という文章が、最も重要でしょう。

(ちなみに、上記の太字の文章は令和元年6月3日バージョンのものです。令和元年5月22日バージョンでは違う文言で、「公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していくことを踏まえて、年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は、公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある(太字箇所が変更点)」という表現でした。新バージョンはマクロ経済スライドのことに言及し、明確になっています。)

 

 

最後、(4)については、「今後は認知症の人はもはや例外的存在ではなく、認知・判断能力の低下はだれにでも起こりうると認識すべきである」との現状認識に対して、「事前の備えや適切な対応の重要性が増していく」という抽象的結論にとどまっています。

去年、証券アナリストジャーナルで金融ジェロントロジー(老年学)について特集が組まれたときに少し勉強しましたが、年齢といった杓子定規の基準ではなく、認知レベルのようなものを客観的に判断し、その基準の下で、適切な接し方というものを作り上げていく必要性を感じます。

証券アナリストジャーナル2018年8月号(金融ジェロントロジー 特集)を読んで

 

 

<やすべえが思う事>

私は、「市場経済を健全に発展させる」という大きな目標の下で、「個々人」、「金融サービス提供者」、「監督官庁」という3者が「それぞれの取り組みを相互理解し、一方でお互いを監視しあう」ことが必要なことであると思っています。

「マネー経済」が「実物経済」と共に経済の両輪となっている世の中で、「マネー経済」をないがしろにしてしまうことは大きなリスクです。3者が協力して育んでいかなければいけないものなのだと思います。

私は、「日本の金融リテラシーを向上させたい」、「日本の金融リテラシーを世界一にしたい」などと言っておりますが、それは、「マネー経済を3者が協力して育んでいく」、「市場経済を健全に発展させる」ために、個々人の取り組みが必要不可欠なものだと思っているからです。

 

今回の第2章「基本的な視点及び考え方」は、そんな3者に対してのメッセージになっていたのではないでしょうか。

 

 

 

次回は第3章「考えられる対応」を読み進めていきます。「データ・事実の把握」、「確からしい答え・意見の表明」ときまして、いよいよとなりますが、「行動のアイディア」が議論されていきます。

第1回のページに目次的なものを作っております。