やすべえです。前回は「ビジョナリーカンパニー」シリーズの概要から、第1巻の「時代を超える生存性の原則」についての読書感想備忘録を書いてまいりましたが、今回は、第2巻の「飛躍の法則」について書いてまいります!

今回紹介する第2巻の「飛躍の法則」が当然ながら第1巻よりも後で出版されたわけですが、著者のジム・コリンズは、第2巻の方が前編にあたるような内容になったと言っています。第2巻では「GOODな企業」が「GREATな企業」に飛躍することを論じ、第1巻では「GREATな企業」を追っているとの理由からです。

では、読み進みていきましょう!

 

ビジョナリー カンパニー② 飛躍の法則 – まずは目次から

飛躍の法則「ビジョナリー カンパニー② 飛躍の法則」の目次ですが、9章に分かれています。1章から、

「時代を超えた成功の法則ーー良好は偉大の敵
「野心は会社のためにーー第五水準のリーダーシップ
「だれをバスに乗せるかーー最初に人を選び、その後に目標を選ぶ
「最後にはかならず勝つーー厳しい現実を直視する
「単純明快な戦略ーー針鼠の概念
「人ではなく、システムを管理するーー規律の文化
「新技術にふりまわされないーー促進剤としての技術
「劇的な転換はゆっくり進むーー弾み車と悪循環
「ビジョナリー・カンパニーへの道」

となります。

ビジョナリーカンパニーシリーズは比喩を使って表現することが多く、第1巻は目次から内容が読み取り難かったのですが、第2巻は目次の副題(下線部分)を見てみますと、内容がざっくり読み取れるのではないでしょうか!?

 

目次の後に謝辞がありますが、かなりの数の名前が調査チームのスタッフとして挙げられています。今でこそ画像から文字を取り出したりすることが出来ますが、当時は紙ベースの資料をコツコツと調べていったのだと思います。膨大な努力がこの本を作り上げていることを改めて感じるとともに、有難いなぁと感謝の念を覚えます。

レビュアーの中には「ビル・ミラー」なんていう名前も出てきます。ビル・ミラーさんは、「ビル・ミラーの株式投資戦略―S&P500に15年連勝した全米最強の投資家」(アマゾンへのリンクはこちら)という、私が何度も読んだ投資書籍を書かれた方で、彼がジム・コリンズと交友があったことを知って嬉しくなりました。

 

ビジョナリーカンパニー(飛躍した企業) vs 比較対象企業

この第2冊目の「ビジョナリー カンパニー② 飛躍の原則」でピックアップされた企業は以下の通りとなります。企業名の後の括弧内は、ティッカーシンボルですが、参考までに入れています。

ビジョナリーカンパニー(飛躍した企業):ジレット(P&Gが買収)、ピットニー・ボウズ(PBI)、サーキット・シティ(チャプター11申請し事実上破綻)、アボット(ABT)、ファニーメイ(上場廃止)、フィリップ・モリス(MO、スピンオフした企業としてPM)、ニューコア(NUE)、キンバリー・クラーク(KMB)、ウェルズ・ファーゴ(WFC)、クローガー(KR)、ウォルグリーンズ(Bootsと合併してWBA)

①で比較対象企業に入っていたウェルズ・ファーゴが、②ではビジョナリーカンパニーに入っています。第一冊目で、ビジョナリーカンパニーと比較対象企業は金メダルの企業と銀メダルの企業を比較するようなものだと言っていましたので、矛盾というわけではないでしょう。

また、ビジョナリーカンパニーとピックアップされたものの、経営が傾いた企業が2社(サーキット・シティとファニーメイ)があるので、本著での分析が正しいのか、若干不安になります。

そして、比較対象企業はこちら。

比較対象企業:ワーナー・ランバート(ファイザーが買収)、アドレソグラフ・マルティグラフ(会社更生申請)、サイロ(最終的にディクソンズ傘下に)、アップジョン(紆余曲折あり、ファイザーが買収)、R・J・レイノルズ(RJRナビスコとなり、KKRによる買収)、ベスレヘム・スチール(破綻)、スコット・ペーパー(キンバリー・クラークが買収)、バンク・オブ・アメリカ(BAC)、A&P(チャプター11申請し事実上破綻)、エッカード(LBOの後、JCペニーに売却される)

比較対象企業は、厳しい運命をたどった企業が数多く見られます。

 

読んで思ったことを赤裸々に・・・

・一番大事なことであると感じたのは「針鼠(はりねずみ)の概念」と書かれている概念で、①「情熱を持って取り組めるもの」、②「経済的原動力になるもの」、③「自社が世界一になれる部分」という3つの円が重なった部分に注力するというものです。林修先生が、仕事に対して「やりたい仕事」と「できる仕事」を縦軸横軸に取って「やりたい仕事」よりも「できる仕事」をやろうなんて言っていますが、GREATな企業は、「やりたい仕事」でもあり「できる仕事」でもある仕事を、世界一のポジションでやっているという、いわば「無双状態」にある企業なのではないかなと感じます。

・人と組織の問題というのは、大いに議論されるべきところですが、本著での結論は、「ビジョナリーカンパニーは、最初に人を選び、その後に目標を選ぶ」というものです。人選びで妥協すると長期的にはマイナスの影響が及ぶことは何となく想像できるところですが、ビジョナリーカンパニーの分析においても同様の結果となっています。言うは易し、行うは難きですが・・・。(こちらについては、次の著作で明解にまとめられています。)

・人選びをしっかりとやるとともに、「真実に耳を傾ける社風を作る」というポイントも出来てきます。しっかりと人を選んだことに加え、選ばれた人が自分の意見を言える(「上司が意見を聞く」という「上から下」では無くて、「下から上」という意味だと捉えます)環境を作ることで、「企業文化」や「理念」といったものが確固たるものになるのでしょう。

・最後に経営者が船頭としてどう立ち振る舞うかという話ですが、「ストックデールの逆説」と表現されますが、現実を直視して最も厳しい現実を理解することと、どんなに困難で挫けそうでも必ず最後には勝つという確信を持つことが、重要なポイントとして挙げられています。そして、経営者の立ち振る舞い方には、もう一つポイントがあるようで、「劇的な転換はゆっくり進む」の章で書かれていますが、すぐに成果を求めずに、しっかりと準備を進めていくことが挙げられます。しっかりと準備をすることで、花開いた時に、持続的な成長や他社の追随を許さない状況が望めることになり、GREATな企業であり続けることが出来る仕組みになるのでしょう。
①現実から逃れないこと②ブレない遂行力を持つこと③急成長ではなく安定成長を志向すること④砂上の楼閣を避けること、と要約されますでしょうか。

 

第五水準のリーダーシップ

「GOODな企業」が「GREATな企業」に飛躍するためには「第五水準のリーダーシップ」が大切だと書かれているのですが、第一水準から第五水準までが下の囲みのように説明されています。簡単に言ってしまうと、一社会人が入社してから、課長になって、部長になって、社長になってという道筋の一つ上に「第五水準」というものがあり、「第五水準のリーダーシップ」には、「職業人としての意志の強さ」、「個人としての謙虚さ」という二面性があると分析されていますが、そのレベルでのリーダーシップが「GREATな企業」に飛躍するためのキーポイントになるという事です。

第一水準:有能な個人
第二水準:組織に寄与する個人
第三水準:有能な管理者
第四水準:有能な経営者
第五水準:第五水準の経営者

「第四水準のリーダーシップで企業は成長するが、その人が引退すると企業は衰退していく」、「第五水準のリーダーシップで企業が成長した場合は、その人が引退しても企業は繁栄する」というロジックなのですがちょっと強引な議論かなと思いました。第四水準のリーダーシップで企業が衰退するとは限らないと思いますし、後継者選びの巧拙というところも大いにありそうです。リーダーシップ研究で昨今増えているフォロワーシップについても考える必要があると感じました。

 

企業比較分析に活かす

本著は、ビジョナリーカンパニーのみを分析することではなく、ビジョナリーカンパニーと比較対象企業の両方を分析することで結論付けていますので、その結論には一定程度の説得性があります。また、本著に載っていない企業について、例えば、ある企業Aとある企業Bについて考えるときに、本著でのビジョナリーカンパニーと比較対象企業を分岐させたポイントを照らし合わせながら考えることができるので、定性的な企業比較分析にも役立ちます。
私が証券会社勤務時代に行っていたペアトレード(ロング・ショート戦略と言われるものです)について、本著にある定性的な観点を取り入れていたら、もっと儲かっていたかもしれません。

そんな企業比較分析やペアトレードに対する考察を行う中で、「飛躍(成長)」に関しての分析は本著でかなりわかるのですが、一方で「衰退」に関しての分析も欲しいと思いませんでしょうか?

ジム・コリンズさん、その点をしっかりとわかっていらっしゃっていて、第3巻『ビジョナリーカンパニー③ 衰退の五段階』という次著にて、大いに説明されています。次回、紹介します

 

 

ということで、『ビジョナリーカンパニー』を読む、第2回目はこのあたりで終わりにしたいと思います。読むたびに、自分の考え方が進化・変化していくのがわかる、素晴らしい本です!

ビジョナリー・カンパニー(2) 飛躍の法則 [ ジェームズ・C.コリンズ ]

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