やすべえです。第7回「大学生・大学院生の特権:特別講演が聞ける有難さ」で紹介しました、京都大学の名物講義「企業価値創造と評価」について、今回から4回に分けて書いていきたいと思います。
「企業価値創造と評価」とは?
「企業価値創造と評価」とは、京都大学の講座の名前であります。
「人気の講座で履修者よりも参加者が多い」などと言われているのですが、その理由は「日本のトップ経営者の生の声が聴ける」ことにあると思います。同じ企業に勤めていても話を聞くことが難しい経営者の話が1時間半近く聞くことが出来て、質問も可能という環境はなかなか得難いのではないでしょうか。そんな得難い環境があるのに、授業の中だけで完結してしまうのは勿体ないということで、書籍化がされています。記事の下にリンクを張っていますので、ご興味ありましたら、ぜひお手に取ってみてください!
また、京都大学のウェブサイトに履修者向けのものですが、講座の紹介が載っていますので、そちらもよろしかったらご覧くださいませ。
「企業価値創造と評価」2014年度を振り返る
「企業価値創造と評価」の2014年度は、京都の企業の経営者が講演した年でした。
すごいラインナップでして、立石文雄さん(オムロン株式会社 取締役会長)、永守重信さん(日本電産株式会社 代表取締役会長兼社長)、堀場厚さん(株式会社堀場製作所代表取締役会長兼社長)、服部重彦さん(株式会社島津製作所 代表取締役会長)、塚本能交さん(株式会社ワコールホールディングス 代表取締役会長)といった顔ぶれです。
知名度で言うと、永守重信さんが一番でしょうか?創業者であり、日本を代表する経営者の一人と言えるのではないでしょうか。そして、立石文雄さんは、お父様がオムロン創業者である立石一真さん、堀場厚さんは、お父様が堀場製作所創業者である堀場雅夫さん、塚本能交さんは、お父様がワコール創業者である塚本幸一さんと、お三方は似たような境遇で会社を継がれました。また、服部重彦さんは創業系ではない経営者の方です。
本書を含め、本シリーズは経営者の方のお話の速記録などから作られていますので、たいへん読み進めやすいですし、講座に参加したような感覚で夢中になることが出来ます。中でも夢中に読み進めることが出来ましたのは、永守重信さんの章でした。
経営者の方は、信念の幹を持っていらっしゃる方がほとんどですが、永守さんの信念の幹というものは、たいへん強いものがあります。「勝つ遺伝子」に満ちていると言いましょうか、「モーターの世界で一番になる」というゴールに向けての推進力、突破力というものが一言一言に感じられます。
質疑応答でM&Aについての質問がありますが「イチロー型M&A」、「ホームラン方式M&A」といった分かりやすいたとえを用いて説明していただいています。そして、「3Q6S」という日本電産の行動規範、(「3Qとは、良い社員(Quality Worker)、良い会社(Quality Company)、良い製品(Quality Products)を表し、6Sは一般的な5Sに”作法”をプラスした”整理、整頓、清掃、清潔、作法、躾”を表します。(日本電産ホームページによる)」)についても言及があります。
一族が経営している会社(また、一族のDNAが会社に深く刻まれている会社)には特徴のある会社が多いですが、その中でも日本電産は特徴があると思います。オムロン株式会社、堀場製作所の章と読み比べていくと、一族が経営している会社についてのより深い知見が得られるのではないかと思います。
島津製作所さんの章では、2002年に田中耕一さんノーベル賞を受賞された時のお話が臨場感たっぷりで紹介されています。本によりますと、『「コングラチュレーション、何とかアワード」とかいわれて、本人は何か賞をもらったんだなという程度の認識だった』と書いてあります。その後、鳴り響く電話によってノーベル賞受賞を確認するといったお話です。
田中耕一さんは今も島津製作所で研究を続けていらっしゃるそうです。そんなエピソードからも島津製作所の社風が垣間見えるような気もします。
最終章の奥野一成さんの投資に関する知見も非常に勉強になります。奥野さんは農林中金バリューインベストメンツの運用担当執行役員の方で、ウォーレンバフェットのような長期厳選投資を実践していらっしゃいます。本書では「長期投資の意義と実践」というタイトルでお話をされています。
第2節「価値創造企業への投資」は、『「価値とはあなたが受け取るものであり、価格とはあなたが支払うものである」というベンジャミン・グラハムの言葉が投資の本質を看破している』といった文言からスタートしていますが、一読してなるほどと思え、二読三読して知識や知恵をどんどんと広げることのできる、お話です。この本の価値は、経営者の方のスピーチの文字起こしが読めるという面と、奥野さんの投資に対する考え方を知ることが出来るという面で、2冊分あると思います!
というわけで、「企業価値創造と評価」シリーズ第1回目でした!次回もお楽しみに!
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