やすべえです。京都大学の名物講義「企業価値創造と評価」について、今回は第5回目となりますが、年明けに発売された最新の2018年度の内容について書いてみたいと思います。

前回までの記事のリンクをざっと貼っておきますので、ご興味ある方はどうぞ!

「企業価値創造と評価」2014年度を振り返る – オムロン、日本電産、堀場製作所、島津製作所、ワコールのトップマネジメントが語ったこと

「企業価値創造と評価」2015年度を振り返る – クボタ、リンナイ、京都銀行、小林製薬、MonotaRO、京セラのトップマネジメントが語ったこと

「企業価値創造と評価」2016年度を振り返る – 積水ハウス、ホシザキ、大和ハウス工業、シスメックス、カルビーのトップマネジメントが語ったこと

「企業価値創造と評価」2017年度を振り返る – サントリーホールディングス、ピジョン、セブン銀行、ライフネット生命保険、不二製油グループ本社のトップマネジメントが語ったこと

 

 

「企業価値創造と評価」とは?

「企業価値創造と評価」とは、京都大学の講座の名前であります。上記のリンクにあります前年までの4年の講義録によれば、「人気の講座で履修者よりも参加者が多い」、「毎回出席確認の意味もありアンケートを実施しています。しかし昨年あたりから、集計するアンケート数よりも明らかに出席者の方が多くなっています」といった文言があり、本講座が人気講座であることがわかります。日本におけるトップ経営者の方の生の声が聞けることや、各分野での著名な方の知見を直接聞ける貴重な機会ですので、履修者以外にも出席するする人が多いとのことです。

本年の講義録の「はじめに」には『五年間に及ぶ一連の講義を通じて、受講した京都大学の学生に伝えたいことは「投資とは何か」ということです。』と書いてあります。まさに、日本におけるトップ経営者の方の生の声が聞くことや、各分野での著名な方の知見を聞くことで、「投資とは何か」ということが分かると思います。素晴らしい構成です!

ちなみに2018年度の登壇者の構成を見てみますと、企業経営者5名、教授4名、運用者の方2名、官公庁の方2名となっています。

京都大学のウェブサイトに公開シラバス集があり、この「企業価値創造と評価」の講座紹介が載っていますので、そちらもよろしかったらご覧くださいませ。

 

「企業価値創造と評価」2018年度を振り返る

「企業価値創造と評価」の2018年度は、任天堂、キッコーマン、丸井グループ、ディスコ、SBIホールディングスの経営者が講演した年でした。

登壇者は、君島達己さん(任天堂株式会社 相談役)、茂木友三郎さん(キッコーマン株式会社 取締役名誉会長 取締役会議長)、青井浩さん(株式会社丸井グループ 代表取締役社長 代表執行役員)、関家一馬さん(株式会社ディスコ 代表取締役社長)、北尾吉孝さん(SBIホールディングス株式会社 代表取締役社長)といった顔ぶれです。

 

どの経営者トークも必見と言ってしまえばそうなのですが、ディスコの関家さんのお話は大変勉強になりましたので、少し紹介しようと思います。

私は長年トレーダーという仕事をしてきましたが、ディスコという会社は浮き沈みの激しい半導体業界の中で、「安定して好調な企業」という印象がありました。リーマンショックの時に(どの会社もそうでしたが)ダメージがありましたが、利益率が高くて、他の半導体業界の企業と比べて投資家に高く評価されている企業で、株価にしても、決算にしても「どうしてこんなに強いんだろう?」とよく思っていました。

企業理念に「高度なKiru・Kezuru・Migaku技術によって遠い科学を身近な快適につなぐ」とあり、そういった事業の絞り込みというのが「安定して好調な企業」であり続けるための戦略と思っていたのですが、キーポイントはお話しの中に出てくる「内的動機経営」というものなのではないかと議事録を読んで思い直しました。

「内的動機経営」というのは、ルールではなくプリンシプルを重視することや、「Will」という社内通貨を使うことによる個人管理会計制度などになります。個人管理会計制度というものは、賛否両論はあるかもしれませんが、非常に興味深いシステムです。仕事を細分化して、仕事ごとに「Will」のやり取りを行うといったものです。制度の設計がしっかりしていないと抜け道や形骸化の恐れがありますし、「Will」のやり取り自体は制度があるために発生する追加の仕事ですし、制度の管理も必要になり、社員への浸透などにもかなりコストがかかりそうですが、なんだかこの制度が効果的であるようなのです。興味深いです。

また、内的動機について考えることで、対極にある外的動機について考えることができます。外的動機とはマニュアルや規則といったルールや、報奨や処罰といった信賞必罰的なものです。こういった外的動機は、導入して維持することは比較的たやすいのしょうが、効果は限定的なのかもしれません。

 

私の表現力では限界がありますので、是非本書を手に取って読んでみてください!面白いです!

 

企業経営者のお話と共に、奥野一成さんの「はじめに」と「第六章」も非常に面白いです!もっといろいろ知りたいと思われた方は、本書のバックナンバーも良いですし、奥野一成さんがCIOを務めていらっしゃる「農林中金バリューインベストメンツ」のホームページに載っている投資哲学を読んでみるのも良いかなと思います。

 

コンパクトに書きましたが以上となります!お読みいただきまして、ありがとうございました!

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